顎関節症は放置しても大丈夫?自然に治る可能性と治療の必要性を解説
目次
「口を開けると音が鳴る」「朝起きるとあごがだるい」「大きく口が開かない」──こんな症状に心当たりはありませんか?
これらは、顎関節症(がくかんせつしょう)と呼ばれるあごの関節まわりの不調によく見られる症状です。
あごの関節は、耳のすぐ前にある「顎関節(がくかんせつ)」という部分で構成されており、食べる・しゃべる・あくびをするなど、日常生活のあらゆる動きに関わっています。
顎関節症では、この関節や周囲の筋肉・靭帯・関節円板にトラブルが起こることで、以下のような不調が現れます。
顎関節症の原因について、「歯ぎしりが原因?」「ストレスがたまると悪化するの?」といった疑問をよく耳にします。実は、顎関節症は1つの原因だけで発症することは少なく、複数の要因が組み合わさって起こるケースが多いと考えられています。
「かみ合わせが悪いと絶対に顎関節症になる」と思われがちですが、かみ合わせのずれがあっても症状が出ない人もいますし、逆にかみ合わせに問題がなくても発症する人もいます。
つまり、顎関節症は“誰でもなる可能性がある”身近な症状だということです。なんとなく我慢しているその違和感も、もしかすると小さなサインかもしれません。
先に、顎関節症の代表的な症状を紹介させていただきました。ところが、近年の研究では別の事も分かってきました。それについて軽く紹介させてください。
顎症状で留まるだけではなく、身体の様々な所に痛みが拡がっていく事がある。これは、勿論、口腔内に症状として現れる事も知られてきています。
わが国では、それを付随症状として顎関節症とは別のものとし、一線を引く傾向に収めています。他方、海外では筋筋膜性疼痛(症候群)として一つの病態と捉える動きもあります。
この筋筋膜性疼痛を起点に捉えると、顎関節症が放置すると厄介な症状になる。その根拠になり得ます。この見地で顎関節症と対峙するか、付随症状は他科という視点で対峙するかで臨床成績は変わっていくのかもしれません。
「そのうち治るかも」と様子を見ていたら、痛みが強くなったり、口が開かなくなってきた──そんな経験がある方も少なくありません。
顎関節症は、放置することで症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともある病気です。
はじめは「なんとなく音が鳴るだけ」「ちょっと疲れるな」程度だったとしても、原因となる噛みしめや関節の負担が続くと、少しずつ症状は進行していきます。
こうした流れで進行していくことが多く、「気づいたときには深刻な状態だった」というケースも珍しくありません。特に「開口障害(口が開かなくなる状態)」は、治療が長引く原因となります。
あごの不調は、実は全身にも影響を及ぼすことがあります。
顎関節やその周囲の筋肉は、首・肩・頭とつながっているため、バランスが崩れることで以下のような症状を引き起こすことがあります。
最初は“あごの問題”だったはずが、気づかぬうちに全身の不調につながることもあるのです。「なんだか最近ずっと疲れている」「肩がガチガチで頭痛がする」などの症状も、実はあごが関係しているかもしれません。正に、先に紹介した筋筋膜性疼痛がそれに該当します。
顎関節症は、早期に適切な対処をすれば軽症のうちに改善する可能性が高いと言われています。
しかし、症状が進行し「開口障害」や「関節円板のズレ」など構造的な問題に発展すると、治療にかかる期間が数ヶ月〜年単位に及ぶこともあります。
また、以下のような状態まで悪化すると、手術などの外科的治療が必要になるケースもあります。
「そのうち自然に治るかな」と思っていたら、かえって大きな負担(治療時間・費用・通院回数)を抱えてしまう可能性もあるのです。
不調のサインに気づいたら、できるだけ早めに相談することが、結果的に一番の近道です。
「そのうち良くなるかも…」「とくに病院に行くほどでもないし」顎関節症を疑いつつも、できれば通院せずに済ませたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
実際、軽度な顎関節症の場合は、一定期間で自然に症状が治まるケースもあります。ただし、すべての人がそうとは限りません。むしろ、放置が原因で悪化してしまう人の方が多いのが現実です。
まずは、自然に改善しやすいパターンを見てみましょう。
こうした軽症の段階では、日常生活を見直すだけで徐々に改善することもあります。
一方、次のようなケースでは、自然治癒が難しく、医療機関での治療が必要になる可能性が高いです。
このような場合は、自然治癒に期待しすぎず、できるだけ早めに相談することをおすすめします。
具体的に「放置しても大丈夫な状態」と「放置が危険な状態」を簡単に見分けられるチェックリストをご紹介します。
✅様子見OKの軽症例(経過観察でOK)
⚠️ 放置NGの症状(専門医に相談すべきサイン)
1つでも当てはまる場合は、早めに医療機関での診断を受けることをおすすめします。
「でも、どのタイミングで病院に行けばいいのか、よく分からない…」そんなときは、以下の3つを目安にしてみてください。
① 症状が2週間以上続いている一時的なあごの疲れであれば数日でおさまることが多いですが、2週間以上変化がない場合は、慢性化のリスクがあります。
② 日常生活に支障が出てきた「痛くて食事がしにくい」「口が開かなくて会話しづらい」など、生活の中で困る場面が増えてきたら、要受診です。
③ 不安やストレスが強くなっている症状そのものだけでなく、「このまま放っておいて大丈夫かな?」という不安が日常に影響しはじめたら、迷わず相談してください。
顎関節症は、初期症状の段階では「様子見」で済むこともありますが、見極めを誤ると、日常生活に支障をきたすほど悪化してしまうこともある病気です。
「少し気になるけど、病院に行くほどじゃないかな…」そう迷っている今この瞬間が、適切な対処のタイミングかもしれません。
そんな場合は、ぜひ一度、顎関節症に詳しい歯科や口腔外科へご相談ください。適切な診断と対策を受けることで、無駄な不安を減らし、スムーズに日常生活へと戻れる可能性が高まります。
顎関節症の症状でお悩みの方は府中市にある歯医者、こすが歯科医院へお気軽にお問い合わせください。